こんにちは、ものづくり支援パートナーズの大音です。
2025年7月、アメリカのトランプ大統領が主導する関税政策が再び動き出しました。特に注目されたのが、日米間で合意された自動車・部品に対する新たな関税率。25%案から15%に下げられたものの、それでもトランプ就任前の2.5%と比べれば6倍の水準です。
こうした動きに対し、「最悪の事態は回避できた」と安堵する声もありますが、本質はそこではありません。大切なのは、もはや“関税がかかること”が例外ではなく、前提となる時代が来たという事実です。そしてこの変化は、日本の中小製造業──とくに自動車業界を支えるTier2・Tier3企業にとって、静かに、しかし確実に影響を広げ始めています。
完成車メーカーやTier1企業にとっては、関税の影響を吸収する手段として、国内回帰するのか、現地生産シフトするのか、ありとあらゆる手段でコスト構造の見直しが進みます。取引先である中小企業には「価格据え置きで、さらにコストを下げて」「納期も短縮」といった、これまで以上に厳しい要求が降りかかってくるのが可能性があります。
ただ、この構図は、今に始まったことではありません。
価格圧力、納期の厳格化、FTAや原産地証明への対応、これらは何年も前から「いずれ必要になる」と言われてきたことです。
しかし今、関税という“外からの圧力”によって、それが「やるなら今」「やらなければ選ばれない」という現実に変わりました。
つまり、「やることは変わっていないが、やる“タイミング”が来た」ということです。
コストの見える化、書類対応力、提案型の関係構築、技術や設備への戦略的投資──どれも理屈では分かっていたこと。
けれど、手が回らず後回しになってきた。
その「言い訳」が、もはや通じないフェーズに入っています。
これらを「コスト」として見るのではなく、「戦略的な経営資源」として捉え、今すぐ小さくても一歩を踏み出すことが、今後の競争力を大きく左右します。
関税の問題は、単なる税率の話ではありません。
外部環境の変化に対して、自社がどう動けるかを突きつける“鏡”のようなものです。
選ばれる会社であり続けるために。
今こそ「変わらなければならない」のではなく、「変わると決める」タイミングなのです。
先を見据えて体制を整えること。
変わらなければならないタイミングが来たときに、すぐに動けるよう備えておくこと。
これは難しいことですが、いまのような厳しい経営環境を乗り越えるために、企業が身につけなければならない“生きる力”そのものだと、改めて感じています。