2023年11月現在、実感として多少マシになったとは感じますが、2022年は材料、エネルギーなどの価格が大きく上昇し、多くの中小製造業で利益が圧迫されたと感じたと思います。中小製造業において、こうした事態に直面したときに重要なことの一つに、自社の製品のコスト見積りが定量的に行えるかどうかということがあります。材料やエネルギー価格が上昇したときには自社の顧客に対して価格交渉をおこなって、値上による価格転嫁を図らなければ自社の利益が圧迫されることになるのですが、顧客は顧客で値上げが妥当な幅なのかどうか説明を求めてくることがほとんどです。その時に自社の製品のコストを定量的に見積もることができなければ、論理的に筋の通った説明をすることは難しくなってしまい、なかなか交渉をスムーズにすることが困難になってしまいます。定量的にコスト見積りを行うことができれば、コストを構成する様々な項目の値上がり幅がそれぞれ異なっていても、最終的に顧客への販売価格にどの程度の影響があるのかを計算して具体的に出すことができるし、それを説明もできる訳です。
また、材料やエネルギー価格が上昇するような外部環境下になかったとしても、製品ごとにコストを定量的に見積ることができれば、営業担当者は価格交渉を進めやすくなり、受注可否判断も適切に行うことができるので、勘に頼ったコスト見積りや根拠のない数値や係数に基づくコスト見積りを行っている場合に比べて収益力の向上が期待できるのです。中小製造業の工場においてはぜひ一度点検していただきたいポイントです。